春草、幻の未完画発見 「雨中美人」納得いかず出展断念

明治時代の日本画家、菱田春草(しゅんそう)(1874~1911)の未完成作品「雨中美人」が東京都内の遺族宅で見つかった。4日、春草の出身地である長野県飯田市の市美術博物館が発表した。亡くなる前年に文部省美術展(現在の日展)への出品をめざして制作を手がけながら、途中で断念した幻の作とみられる。
「雨中美人」は六曲一双、12枚の屏風(びょうぶ)絵。縦1メートル65センチ、横はつなげると7メートル33センチになる。妻千代さんをモデルにした女性が描かれ、彩色が施されている。ほかの人物と背景の柳の木などは、墨や鉛筆、木炭による下書きの状態だ。
春草が36歳のときの作品で、人物デッサンと下絵の一部の存在は知られていたが、全体像がわかるのは初めて。孫の自宅で今年1月、屏風からはがして丸めた状態で見つかり、同館に寄託された。
1910(明治43)年の第4回文展に出品予定だったが、着物の灰色が思うように描けなかったため先送りしたことが、関係者の残した著述で明らかになっている。代わりに5日間で完成させて出品した「黒き猫」は国の重要文化財に指定されている。
春草は横山大観、下村観山らとともに岡倉天心に学んだ。「朦朧(もうろう)体」と呼ばれる輪郭線を描かない画法でも知られる。
作品は21日から4月19日まで同館で開かれる特別展「創造の源泉―菱田春草のスケッチ」で公開される。
2015年3月5日付朝日新聞夕刊

Image1Image2

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です