『マイ・タウン21』のロケ地マップに「天心」が掲載されました

いつもお世話になっています茨城県鹿行地域のタウン誌『マイ・タウン21』1月10日号で、地元のロケ地紹介で「天心」が掲載されました。
鹿行は松村監督の母の故郷だけでなく、初代水戸藩主・徳川頼房の領内巡視の際の宿泊所、また水戸藩南部の藩政事務所として、寛文期(1661~72)に建てられ茨城県指定有形文化財である「大山守大塲家郷士屋敷」(行方市玉造甲4533-3)を保存する歴史ある街です。
映画では「大山守大塲家郷士屋敷」を谷中初音町八軒家時代の横山大観宅に見立て、そこに菱田春草が訪ねてくるという場面と、五浦時代の大観一家の暮らしという設定で2012年12月撮影しました。
八軒家シーンは、大観役の中村獅童さんと春草役の平山浩行さんが座敷で対座し、その向こうに日本の美術界から排斥された天心を描いたとされる大観の大作『屈原』。
屈原は春秋戦国時代の詩人であり、そして政治家として秦の張儀の謀略を見抜き、踊らされようとする懐王を必死で諫めたが受け入れられず、楚の将来に絶望して入水自殺した人物です。
師である失意の天心に対して、大観と春草の不安な心情を『屈原』を通して語るという重要なシーン。
しかし、『屈原』からオーバーラップされた天心は、白砂青松を誇る福島の舞子浜でなく、奇岩が並ぶ茨城の五浦を選び、ここを東洋のバルビゾンと呼び芸術のユートピアにすることを決意します。
映画のみならず、天心にとっても、日本美術にとっても大きなターニングポイントになったシーンが「大山守大塲家郷士屋敷」で撮影されたのです。
この撮影にとって最大の難関は、美術スタッフが総力で再現した縦1.3m×横2.9mもの実物大『屈原』を、江戸時代の有形文化財を傷つけることなく搬入できるかということでした。
どこまでもリアリティに拘る私たちにとって『屈原』は実物大でなければならず、しかし今と違って狭い間口の屋敷に果たして無事運び入れることができるのか、スタッフ会議でも問題となりました。
その結果、美術部は屋敷の寸法を測り搬入ルートを慎重に設定し、「これなら行ける」という結論を得て、見事に大観と春草の素晴らしいシーンが実現できました。
一方、五浦時代は大観が映画でも述懐しているように芸術的にも経済的にも最も苦しかった頃、先妻を3年前に亡くした大観は天心に言われるがまま五浦へと老母と若き後妻を連れて行かざるを得ず、赤貧に明け暮れます。
五浦時代の大観を支えた妻・直子を演じた鈴木聖奈さんと獅童さんとのシーンがここで撮影されましたが、同じ大塲家だとお気づきでしたか?
鹿行地域では映画製作のみならず、上映など本当に多くの皆さまからのご協力に支えられてますことを改めて深く感謝申し上げます。
皆さま、ありがとうございます!!
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